犬のモウショ6

僕らが丘の上の廃墟に入ってみてから数ヶ月して何かの話でママとの間でママからあの人気のない家の怖さか不用心さの話が出た。一人では行ってはいけないとの話でであった。以前どこからか寄港した船の水夫が下の港町の飲み屋のホステスと仲良くなり、船を下りて二人で生活を始めた。その時1匹の子犬もついてきたのだそうだ。その話はおばあちゃんから聞いた。二人(と子犬、の生活は取り敢えず順調に行ったが、水夫が当てにしていたホステスの蓄えがそれ程の額でもなく、そしてそのホステスも浮気性な人で(ここの所はおばあちゃんが話してくれた、段々と仲が悪くなりホステスは別の町に出ていった。残された水夫と子犬はホステス名義で借りていた丘の上の家に居座った。それでも水夫は時々は港に出ていって重い荷物を運んだりの隠れアルバイトをして生活をしていたが、ある時ホステスが自分に家賃の請求が来るのを嫌がって腕の強そうな男(これもおばあちゃんは今の恋人と言った、と一緒に来た際、嫉妬もあって刃物沙汰になったそうだ。そんな経緯が繰り広げられたのがあの妹とモウショと僕が一度行った家なのだった。