帰還一

禎一がこの地を再び来てみようと思ったのは躊躇いの果であった。ある思い、それは多くの場合憂鬱なものであって、それを抱え始めると夢の底に降りていくような、いや引きずられていくような更なる憂鬱を抱える、人は他人も皆そうなのかもしれないがと禎一は思いつつも、自分の今の力ではその問題、その悶々とする課題は解決できないなと思う。それで旅立つ、ということが他の他人の場合と同じく自分の場合もありジッとしていられない、そんな何度めかの一つのいつもする旅先を今度は昔の暮らしていたこの町に行こうかしらと禎一は思ったのである。