野火のごとく生きよ、詩詞の華の下で1

何回めかの高校の同期会の幹事クラスが廻ってきたとき、同じクラスの近松はその時は生きていたんだ。それから程なくスピーディーな病気の進行で、本当に呆気なくこの世の土俵を割って逝った、それを慎二は不思議な気持ちで今思い返す。その短い期間とはいえ多分に観察しようとしていた自己の嫌悪とはいえないまでも、腹を割れないことのある種の狡さ、それが気の障りのようなものと今は思えてきた。言う言葉はあったかもしれない。それは救いには多分ならなかったもしれない。今も方策なき問題のようなものそれが後かたずかずに残っている気がしているのである。