野火、詩詞の花の下2

近松が指定してきたそこで幹事会予定だったその名前のビルは予想通り共産党の労働者支援事務所が入居している建物だった。高校卒業以来初めて会った同級の眞下はそのセンターの代表格になっていた。以前はバスケ部にいた彼は敏捷なやせ形体型をそのまんまにし、信二との間で近松が来るのをまつあいだとりとめない会話をしてきた。目は踊ってなかった。信二も労働事件の手伝いをしたことがあり、そうした組織の方がある意味労働者には役にたつこともあり、適当に普段の業務、最近の傾向の事件などの話をした。そこに近松が入ってきて遅れたのを誤魔化すように!開口一番「なんかいいアイデア出たか」と聞いてきた。「まだまだ」「なんにも」答えつつ、近松が持ち出した書き込みの紙を眞下と信二とは覗き込んだ。そこにはどこから取ってきたか詞の抜粋が書き込まれていた。「十クラスに各クラス一個の詩、それで朗読バトルする」「詩の格闘技?」大袈裟に眞下が聞いた。「潮先生が審査委員長、僕らもあの頃に戻ってね。相当よれよれだけどね?」近松がおどけた。「そんなんで盛り上がるかね」信二が冷静になって聞いた。「盛り上がり無視!俺はね今読むといいんじゃんと思えるから熱中したね、半日図書館で潰した。あるんだな結構、今にしてわかるというのが」自分の努力が報われよりも、少しばかり遅ればせの勉強が、有益な報酬だったように近松は話した。「検討しますか?」面白さを検証するかのように持ってきた紙片をそれぞれが読み始めた。「案外いいかもね。少なくとも今までの企画にはない」