ある株主総会二

駅には食品側の若社長が出迎えにきていた。彼は軽く笑顔で会釈をしたあと一通りのこれからの段取りを説明をそてくれた。総会は午後2時からを予定していた。少し空き時間があるので二人で駅近くの和食屋で昼飯をとった。座敷にくつろぐと多弁になりこれからのことは全く心配ないと議事進行以外のことを話しはじめた。「おかあさん(相手の不動産会社の現社長をこう呼んだ)ももう昔の事は言わないと思います。先代の先生とのわだかまりは綺麗に解けてますよ。却って頼もしい人が監査役に就いてくれると私にはいったくらいです。」彼は私のこだわりが無用だと説明をしてくれた。私の中にはそれまで自分の父と相手先の会社との関係でしっくりしないものが感じられていた。それを彼はわかっていたので事前に話してきたのであろう。そんな簡単に変えられるものかなと思いつつ、一方で随分強引に役員に私をねじ込む、その一種の豪腕に、彼の言った頼もしさというのは自分に向けた言葉のような感じを抱いた。全体として昔から今へ一つの時代は町単位或いは人単位でも変わって行ってるのであって、そうした変化を若い彼には機敏に感じとるセンサーがあって、更にそれに圧をかけ自分の思う方向に引っ張って行く力強さがあるのかもしれなかった。それは初めて彼に懐いた私の感情だった。