妾の生涯弐

資料は4つの箱に収めてあった。やや大きな箱には訴訟書類などが入っていた。2番目の大きさの箱は彼女の属してたらしい「カルヴィンの友」という宗教団体の教父とのやり取りの書簡、小さな聖書、会合の案内等の心の来歴を示す書き物関係が入っていた。3番4番には彼女の写真、写真集の一部の写真が切り剥がれたもの、埋葬の案内、通年ではない日記、書き込みのあるカレンダーの切りハギ、等私物、プライベートな部分をのぞかせるものが入っていた。衣類関係はなく死亡時点で処理され、処理できぬこれらのものが彼女の友人であり、カルヴィンの友(その集団は教祖のみが男性で教父(母?)や信者は全員女性だった)の同士でもあった弁護士により一時保管されていたことになる。それらが私の手に渡った理由はおいおい書いていこう。ともあれ、私がもっと興味があった彼女と父との確執は訴訟記録の中から少し事情が明らかになった。その種の争いごとから(多分女性弁護士の勧めで)、カルヴィンの友の会に彼女はのめり込んで行ったのだろうと私にはそう思えた。父のインパクトは大きく、それを彼女は分解して破壊したかっただろうに、現実にそれができなかった、そんな無念さを私は段々感じ始めていた。