彼女の生涯4

多分父から受け彼女がそう受け止めた暴行というのは、彼と彼女とが育ち育てられたその土地のある地方では当たり前、他の家族間でも為されてたことだったかもしれない。最近もその地方で大きな地震が発生した、その海辺の町というのは、潮風が強く強く吹く北国の一角の、どちらかというと海には開け冬には陸の孤島化しかねない土地柄である。彼女が育ったその頃は、その陸の孤島は隔絶していたことだったろう。そうしたローカリティが人の感情をある時は嵩上げする傾向があるのは誰もさほど否めない。それを最大にみて過小に評価すべきでないと私は考えるがその点は異論のあるところかもしれない。ともかく彼女が父から受けたと言い張るその暴行は今なら事件になりかねなかっただろうが、当時としては家庭内では無視されかねないことだったろう。しかし彼女はその件をしこりとして父を恨んでいた。その点は後日事件を担当した弁護士にも共有されていた。