衣縫う母は1

高木正行が休暇を利用して地元で車を借り方方を旅行した後、その目的で帰郷したその為の施設に着いて、建物の中に入ってみるとその年金事務所は意外に混雑していた。嘗て年金の杜撰な管理が問題となり多くの人が心配し騒いだ状況になって駆けつけた人も多数いただろうが、その後平静に年金問題、一種のトラブルも平穏無事となりあまり年金事務所に訪れる者も少なくなったとの印象だったが、それは事実ではなく案外に相談者は多いようだった。その原因は一頃の名宛人への各種年金情報処理が順調に行ったその先の問題でか、その前の年金情報が未だ錯綜してるが故なのかは俄には分からなかった。受付の女性係員は予約をお持ちですかと聞いた上で、無いと分かると予約ある方が優先で2時間ほどお待ち頂きますよと受け答えした。この郷里で処理しその後東京に戻るべく、多少の時間のロスは無視し待つことにした。高木の兄の件だった。兄はこの町に戻れなくなって久しい。自分で年金を納めたことはない。仮に年金が一定期間支払ってたとするとそれは高木の母がしたことになる。その母はしかし自分が何をしたかは告げることなく今から三十数年前に亡くなっていた。年金事務所からは一枚の葉書が最近にきた。それ等の事とすべてが無関係に兄は病気で入院していた。その一枚の葉書が何事かを引き起こしている。眠っていた過去を覚醒させた。その時はまだそうなるとは想像していなかったが、何かが産まれ一つの運命線が微かに現れた。大したことではないがその線の始まりに実線を入れるのをその時開始したのだと思う。母はその失敗も成功も知る由はない。でもこの話は高木は母への報告のような形になる気がすると思った。それを報告したからと言ってどうなるというものでもないがやはり書かなくてはならないものてあるんだろ。さぁ始めようか。