犬のモウショ9

おばあちゃんから聞いた話は奇妙な話だった。おばあちゃんはそれを妹出産の際の産婦人科医のそのお父さんから聞いたらしい。その病院はお菓子やさんの社員の定期検診する個人だけど大きな総合病院だった。その話によれば妹は最初から手が不具ではなかった。妹はその小さな手のなかに赤い布を握り生まれてきた。それは本当に小さな小片だった。弟も青い小片を握っていたらしい。でも弟が生まれ亡くなる時に弟の手は閉じられた。そして弟が亡くなると同時に妹の手も閉じたられた。そんな話をおばあちゃんは僕に例の話し方でしてくれた。

ここで最近覚えたチベットの仏の教えにまつわる説話を紹介すると、そのなかに輪廻転生を信じるその教えのなかに双子で生まれるてくるその二人には結び付きを明らかにする何かの兆標が体の外部や内部に付けられており、外部の場合糸や布が目印となることもあるようなことが書かれている。外部になるのは珍しく、内部の兆標は以前の恋人同士だという考え方もあるのだと言われてもいるらしい。

僕がその話を聞いて気になったのはそういえばモウショが拾われて我が家にやって来たときモウショの首には青い布地の首輪がつけられていたことだった。ママは急いでそれを取り外し普通の皮の首輪に変えたけれど、僕には青い首輪もモウショには似合ってたし、ママがそんなに急いで外す必要もないのにと思った記憶も少しあった。しかしこのおばあちゃんの話はなんとなく心の中には入ってこなかった。そしていずれ忘れられた。おばあちゃんの一言一言はそれなりに重みを持っていたはずなのに。